自作PCのパーツ選定基準《電源ユニット編》
こちらのページはPCパーツを選定する時の基準《電源ユニット編》をまとめた記事だ。きっかけとなる記事はこちら《自作PCのパーツ選定基準について考える事》になるため、もしまだ見ていなければよろしければ見てほしい。
電源ユニット
左の画像のような電源ユニットの正式名称は「ATX電源」と呼ぶ。
今後投稿予定のPCケース編でも併せて解説する予定だが、PCケースには大体こんな感じの電源ユニットか、【SFX電源】と呼ばれるATX電源よりも小型の電源ユニットが搭載されているとだけ分かっていればとりあえずは大丈夫だ。実は他にも様々な規格の電源ユニットはあるが、特殊なPCケース/用途でない限りは使わないので今回は省く。
ただしこれだけは覚えておいてほしいが、電源の規格で決まっているサイズは「高さ」と「幅」のみだ。「奥行」は電源ユニットによって変わってくるので、搭載したいPCパーツやPCケースを考慮しながら選ぶ必要がある。
ということで、今回は電源ユニットを選ぶときに気を付けるポイントを解説いく。
(1)電源容量
下は120Wから上は1500W超えまで様々な電源容量の電源ユニットがある。電源を選ぼうと思った時にまず最初に悩むのは何ワット(W)の電源を選べば良いのかという所だと思う。
この電源容量の目安は、各パーツごとに設定されているTDP(Thermal Design Power)を合計した数値を2倍にしたくらいが電源容量の目安となる。
TDPって何?という話だが、何となく「だいたいの消費電力の数値」として考えている人は多いと思う。それが実際に間違いでもないのだが、本来の意味は「これくらい発熱するから、これに間に合うように冷却してね」というのが実際だ。
まぁここでは電源容量を測るための目安として考える事になるので、前者の考え方をしてもらえば良い。その上でこのTDPを測るにはどうしたら良いのか、となるとメーカーのスペック表を見てもらうことになる。
例えばIntelのCore i9-10900Kを例にした場合、公式サイトの仕様情報(リンク)を見るとCPUの仕様にしっかりと「TDP 125W」とある。同様にAMDのRyzen 9 5900X(リンク)も「デフォルトTDP/TDP 105W」となっている。
中にはMSIグラフィックボードGeForce RTX 3080 GAMING X TRIO 10G(リンク)の様に「消費電力 340W」と書かれているのでその場合はそちらを参考にしてほしい。
ただ一つ一つこれらを見ていくのは大変なので、簡易的な電源容量計算機であればドスパラ(リンク)のものを、かなりしっかりと計算できるものであれば海外のページになるがこちら→「OuterVision® Power Supply Calculator」を使って容量を計算していくのが良いだろう。
その他の参考として、先ほどのグラボのページで気づいた人もいるだろうが、グラボの仕様表のページには推奨電源容量として書かれている事が多いのでこれを参考にしても良い。
- GIGABYTE AORUS GeForce RTX 3080 XTREME 10G「Power requirement 850W」
- ASUS ROG-STRIX-RTX3080-O10G-GAMING「推奨PSU 850W」
(2)80 PLUS
電源ユニットを選ぶときに必ず目に入るであろう「80 PLUS」という言葉。これは電源の電力変換効率を示す規格で、変換効率の低い順にスタンダード、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、チタンの6つのランクに分かれている。電源を買う場合はこの80 PLUS認証された電源ユニットを必ず選ぼう。
勘違いされがちだが80 PLUSは電源の優秀さを示していると捉える事は出来るが、電源の品質を示すものではないので注意されたい。高性能だから長寿命という事ではないのだ。
そもそも電源ユニットは製造段階で、電源の負荷率を50%くらいで納める事を前提に製造されている。電源容量の解説で「TDPの合計の2倍くらいが電源容量の目安」と書いたが、その根拠にこれがあるためだ。
80PLUSの認証が通っていれば、その電源ユニットの変換効率が保証されているため安心して使う事が出来る。この変換効率が不安定だとPCの動作まで不安定になってしまうのだ。
分かりやすい変換効率の表がWikipediaの『80 PLUS』変換効率によるランク付けの項にあるのでそちらを確認してほしいが、ランクが上がるほど変換効率が上がっている事が見て取れる。
ランクが上がるほど製品価格も上がる為どのランクを選べばいいか迷う所ではあるが、最低はブロンズ以上の認証を受けた電源を選びたい。
(3)プラグイン
電源のケーブルはマザーボードに接続する電源コネクタや4ピンコネクタ、HDDやSSDに接続するSATA電源コネクタ、グラボに接続するPCI Express電源コネクタと様々なケーブルが存在する。
このケーブルは大体固めで取り回しが悪く、使用しないケーブルも出てくる。これを改善するのがプラグイン電源だ。
電源本体とケーブルが分かれており、必要なケーブルさえ接続すればよい。そのため、不要なケーブル排除による省スペース化や配線の取り回し、見た目のスッキリさ等のメリットが大きい。
その他に、必ず使う電源ケーブルは既に接続されているが、それ以外は脱着可能なセミプラグインというのも存在する。
【プラグイン電源】
【セミプラグイン電源】
注意したいのが、プラグイン電源に付属したケーブル以外のケーブルを使用してしまう事だ。
ものによっては電源ユニットに対応したケーブルを販売しているメーカーもあるが、基本的に電源ユニットに付属したケーブルを使用するのが原則で、もし付属したケーブルではないものを用いると最悪発火の危険性がある。
まとめ
- 電源容量はPCパーツTDP合計の2倍くらいの容量にする(例:TDP合計350Wだった→700Wの電源容量にする)
- 80 PLUSはブロンズ以上が無難
- プラグインやセミプラグイン電源だとケーブルレイアウトが自由にできるのでオススメだが付属のケーブルを使おう
コレを買っとけのコーナー
数ある電源ユニットメーカーで最も優秀なメーカーを挙げろと言われれば、通称「紫蘇」と呼ばれるSeasonic(シーソニック)というメーカーを挙げる人は多いだろう。
電源ユニットメーカーでは老舗メーカーであるSeasonicは、非常に手厚いサポートで高品質な日本製コンデンサ、高性能で長寿命な流体動圧軸受(FDB)ファンなど細部までこだわった製品となっている。
価格はその分高めであるが、使えばわかるその圧倒的安心感がある。もし電源ユニットが特にひどい故障をしてしまった場合、他のPCパーツを巻き込んで故障してしまう事もある。人間で例えれば心臓に例えられるぐらいには重要なこの電源ユニットにこだわる場合は、このSeasonicの適切な電源容量の電源ユニットを買っておけば間違いない。
と、これで終わってしまってはSeasonicの回し者みたいなので、Seasonic以外でオススメの電源ユニットをご紹介しよう。
- Antec NeoECO Gold NE750G 10,000円前後くらい ←は750W 他650Wと550Wもあり 80 PLUS GOLD認証 7年保証もあり定番電源ユニット 中身はファン以外SeasonicのOEM
- Super Flower LEADEX III GOLD 750W 14,000円前後くらい ←は750W 通称「超花」 日本ではあまり見ないが海外ではSeasonicと同等クラスの評価をされるメーカー 日本での流通は少な目 80 PLUS GOLD認証
- Corsair RM850x CP-9020180-JP 15,000円前後くらい ←は850W 10年保証 これも中身はSeasonicのOEM(だったハズ) 80 PLUS GOLD認証
- Corsair CX450M CP-9020101-JP 5,400円前後くらい ←は450W 容量は少な目なのでグラボは積まない人向け 80 PLUS BRONZE認証
- SILVERSTONE SST-ST30SF V2 5,300円前後くらい ←は300WのSFX電源 事務用途な小型なPCを作りたい人向け 80 PLUS BRONZE認証
- Corsair SF600 CP-9020105-JP 15,000円前後くらい ←は600WのSFX電源 品質にこだわった小型なPCを作りたい人向け 7年保証 80 PLUS GOLD認証