CR-Zという世に出るには早すぎた車
車に求めるものは一体何だろうか。
安全性?
燃費?
居住性?
車に興味がなければ、いかに「維持費が安く」「運転し易く」「どれだけ人が乗れるか」といった所がポイントになると思う。
事実、N-BOXやタント等のミニバンタイプの軽が非常に流行っている。
そんな世情ではあるが、昔から車の運転に楽しみを見出す少数の人々が居た。
その者達は運転がどれだけ「楽しいか」を優先事項として考え、いろんな事を犠牲に車に乗ってきた。
そんな中、2010年にHONDAが1台の車を発売する。
それが、CR-Zである。
この記事はそのCR-Zに乗った一人のドライバー兼筆者が、「こんな車があったんだなぁ」と皆に知ってもらって、あわよくばHONDAさんにCR-Zの後継車種を・・・、と目論んだものである。
CR-Zの後継車種を・・・と言うぐらいで、実はこの車1代限りで既に販売を終了している車である。
それはなぜか。
先に結論から言うと、誰も買わない乗らない不人気車だったからだ。
CR-Zの開発コンセプトとして、環境負荷の少ないハイブリットを搭載しそれでいて運転が楽しいスポーツ性を兼ね備えた車、という当時は非常に画期的な車であった。
また、1980年代~90年代にかけてFFライトウェイトスポーツというジャンルを確立させたCR-Xという車がHONDAにはあった。
CR-Xは「小さい」「軽い」「速い」という当時は非常に画期的な車で、このCR-Zはその名前からCR-Xの後継として考えられ、皆の期待値は非常に高いものとなった。
だが実際どうだったのかというと、蓋を開ければスポーツ面では他のスポーツ車に劣り、燃費性能は他のハイブリッド車に劣るというどっちつかずの中途半端な車として不評を買ってしまう。
しかも、前述のCR-Xの再来を期待していた層からの失望も買い、そのため発売直後の評価は悪くなかったものの前述の不評が付きまとってしまい、結果として不評が悪目立ちする残念な形でスタートを切ってしまった。
また、発売から2年後のマイナーチェンジでは不評であったスポーツ性能を向上させるも、同時期にTOYOTAが「86」を販売し強力なライバルとして立ちふさがる。
そのまま86は当時のスポーツ車の人気を欲しいがままにし、今でも現行で販売されている人気車種になった。
CR-Zはその陰で、2016年にひっそりと販売を終了してしまう。
そんな不遇のCR-Zを筆者は乗っているが、そんなに悪い車か?と聞かれると答えは「NO」だ。
筆者の乗り方は通勤やちょっとしたドライブで使うぐらいで、サーキット等で本気で走るような事はしない。
あくまでもシティーユースな車として乗っている。
まずこの車に乗って思う事は、これで必要充分だという事。
踏めば簡単に速度は出るし、カーブの安定感も普通の乗用車から比べると全然違く安心してカーブを曲がることが出来る。
燃費性能も実燃費リッター15キロとそこまで悪いわけではなく、また、スポーツ車には珍しくガソリンはハイオクではなくレギュラーでOKだ。
排気量も1500ccと自動車税もそこまで高くなく、全体的にお財布にやさしい車なのだ。
あとは主観になるが、普通にカッコいい。
路上での安定性からくる安心感のある走り、維持費の安さ、見た目のカッコよさ。
これらが揃った車はそこまで無いであろう。
また、もともと不人気車という事も相まって、状態が良い車でも中古相場が非常に安い。
唯一デメリットを上げればやはり乗車人数が実質2名という点であるが、こればっかりは諦めるしかない。
ただ独身である筆者は人を乗せることがほぼ無いため、デメリットにはならない。
結局この車の評価というのは、人々の期待値の高さと当時の技術力が噛み合わなかったが為に成された評価であると筆者は思う。
このコンセプトで今の時代の技術力でもってCR-Zを出せれば、多くの人を満足させられる車が出てくるはずだ。
だからこそたくさんの人にこの車を乗ってもらってその良さを知っていただき、なんだか運がいい事にHONDAさんにその熱意が伝わって、あわよくばCR-Zが復活してくれればこんなにうれしい事はない。 そんなことを思いつつ、今日も筆者はCR-Zで走りに出かけるのだった。