フレイバーテキスト選 第4版

 こんにちは。スマイルです。フレイバーテキストを巡る旅の第一歩、今回は第4版のカードを見ていこうと思います。

 マジックには30年近い歴史があり、それ故に発売されたカードの種類も膨大。特にインターネットが普及していなかった黎明期の情報などは、調べることが難しくなっています。しかし幸い、マジック初のセットであるアルファ版から最新セットまでのカードギャラリーが、全て日本公式サイトに掲載されているのです。

『マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト』より

 マジックのイラストは、今でこそCGを用いたリアルなものがほとんどですが、昔の絵画的なイラストも味わいがありますね。当時のプレイヤーたちはこのイラストを眺めながら、どんな気持ちでマジックを遊んでいたのでしょうか。

 さて、今回の主題である第4版は、英語版が1995年、日本語版が1996年に発売されています(参考までに、マジック初のセット、アルファ版の発売が1993年です)。第4版は初めて日本語版が印刷されたセットでもあり、古参プレイヤーの中には、この頃からマジックを始めた人が多いとか。
 また、1996年にはマジック初のプロツアー(現:ミシックチャンピオンシップ)が開催されています。60枚デッキと4枚制限の導入、禁止・制限カードの制定、スタンダードフォーマットの規定(当時の呼称は「タイプ2」)を経て、段々と競技としてのマジックが形作られていった頃と言えるでしょう。

軽く歴史的な背景を振り返ったところで、早速第4版のカードを見ていきましょうか。




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天秤・・・だと・・・

どんなに不利でも2マナでリセット

 OK、落ち着きましょう。繰り返しますが、第4版は初めて日本語版が印刷されたセット。「Balance」に「天秤」という日本語訳が存在する以上、第4版以降のセットに収録されているのは当然と言えば当然です(かのBlack Lotusのように、第4版以降一度も再録されていないカードは未だに公式な日本語訳がありません)。

 それにしても、同じセットに収録されている神の怒り(4マナ)とハルマゲドン(4マナ)を足したような効果で2マナって何なんですかね。ライフ差までは埋められないから別にいい・・・のか?

お手軽大量ハンデス
1マナ土地破壊

 あー・・・ありましたね、こんなカードも。まあ、精神錯乱はトーラックへの賛歌(2マナ2枚ハンデス)にマナ効率で劣るし、露天鉱床は土地1枚同士を交換するだけのフェアなカードなので、言うほどでもないのでしょう(感覚麻痺)。

Black Lotus超えのマナ加速

チャネル、お前もか。

 Channel、Channelって呼んでいたので、てっきり英語版しかないのかと。しかし、何故こんなカードが第4版に・・・。当時はまだ重くて強力な無色のカードがなかったからと言えばそれまでですが、それこそチャネルボールなんていう即死コンボがアルファ版から組めるわけで・・・。

 さて、だいぶわき道にそれてしまいましたが、いい加減にフレイバーテキストを見ていくとしましょう。

灰色熊

ドミナリアの灰色熊から走って逃げてもむだだ。追いつかれ、たたきのめされたあげくの果てに食われちまうのがオチだ。もちろん、木に登るのは手だろうさ。そうすれば、灰色熊が木を倒してお前さんを食っちまう前に、ちょっとした風景を楽しめるからな。

 マジックの最も基本的なクリーチャーである灰色熊。2マナ2/2のクリーチャーを総じて「クマ」と呼ぶのもこのカードが由来です。
 フレイバーテキストも、危機的な状況の中に若干のユーモアを含ませているあたり、実にマジックらしいカードです。

 なお、灰色熊ことグリズリーは北米に生息する大型の種で、北海道のエゾヒグマの親戚にあたります。時速50km以上で走ることもあるそうなので、無駄な抵抗は止めましょう。

発火

ハイ!ニィ!ヤッ! 火打ち石の男の姿を見よ。そは我なり。 四つの稲妻が我より走り出て、撃っては戻る。
――― ナバホ族の戦唄

 独特の掛け声で、これも昔から人気のあるフレイバーテキスト。ちなみにナバホ族は実在するアメリカの先住民で、あまりにも複雑なナバホ語は、第二次世界大戦においてそのまま暗号として用いられたという逸話があります。

丘巨人

幸運なことに、丘巨人には人間が簡単に隠れられる大きな死角がある。不幸なのは、この死角が彼らの足の裏の下にあることだ。

灰色熊もそうだけどさ、なんで一瞬、希望を持たせたの?

ゴブリン気球部隊

「ここから石や岩や矢を落とすんだ。さあ、もっと石を出せ!」
 「わかった、大将。でも、わしらはどうやって降りるんで?」

 ファンタジー世界の代表的な種族であるゴブリン。その描かれ方は作品によって様々ですが、マジックの世界では、概して知能の低い種族とされています。
 その、どこか間の抜けた言動はフレイバーテキストにもよく表れており、昔からファンも多いとか。

オーク弩弓隊

めったに見せない発明の才によって、オークは信じられないほど破壊的な兵器を開発した。このオーク弩弓隊の兵士の大半は、その有効性に疑問を投げかけた者たちが務めている。

 代償として自分もダメージを受けますが、継続的に2点火力を飛ばすことが出来る優秀なクリーチャー。カードとしての性能からも強力な兵器であることが分かります。製作者はかなりの切れ者だったのでしょう。なお、使用者は・・・。

鉄爪のオーク

何世代にもわたる遺伝的な淘汰によって、嫌らしくも卑劣な鉄爪族が誕生した。「オークはすべからく残虐で下劣な、堕落した生き物だ」と言うぐらいでは、鉄爪族を正しく言い表したことにはならない。

 これでもかとばかりに貶された挙句、まだ言い足りないとまで言われるオーク。ここまで言われるなんて、どれだけ酷い生き物なんだ?

答え:イラスト参照

チビ・ドラゴン

ドラゴンになりたい。蚕のようにちっぽけか、それとも、でっかく……
――― マリリン・ムーア「ドラゴンになりたい」

きゃわいい。

 マリリン・ムーア(Marilyn Moore)はアメリカの歌手で、『O to Be a Dragon』彼女の手による詩集です。このように、マジックのフレイバーテキストには聖書やシェークスピアなどの古典からの引用が時折見られます。

屍肉蟻

父はよく言った。「戦争はピクニックじゃない」と。しかし、この蟻たちは同意しそうにはなかった。

 名前から察するに、ピクニック気分で戦場にやって来ては死体を貪っていくのでしょうか。こいつらの場合、死体じゃなくてもバリバリいけそうです。

真紅のマンティコア

見た目とか愛想の良さでは注目されないが、マンティコアは恐るべき味方になりえる。 しかし、共に夕げの卓を囲む相手としては、間違っても招待してはいけない。

僕もそう思います。

灰色オーガ

オーガの哲人グナーデルは、食物連鎖の中でより高い地位を得ることこそ人生の目的だと信じていた。彼女は草食動物を食べることを拒み、知的生物を捕食する生き物だけを食べる道を選んだ。

止めろ、人間を食べても人間の力は手に入らない!

イシュトヴァーンおじ

孤独が老いた隠者を狂気に追いやった。今、彼がつきあう相手といえば、この隠者に捕えられた者のみだ。

 何やら恐ろしげなこのカードの名前は「Uncle Istvan」。「uncle」は両親の兄弟、または年配の男性を意味する単語で、日本語の「おじさん」がそのまま当てはまります。
 マジック界広しと言えども「おじさん」なんて名前の付くカードはこれ1枚。でもクリーチャータイプが「イシュトヴァーンおじ」ってことは、他にもイシュトヴァーンおじが存在するってこと?一体何者なんだ、このおじさん。

 第4版のフレイバーテキスト紹介は以上になります。楽しんでもらえたのであれば幸いです。お読みいただきありがとうございました。

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