自作PCのパーツ選定基準《グラフィックボード【AMD】編》
こちらのページはPCパーツを選定する時の基準《グラフィックボード編【AMD】》をまとめた記事だ。きっかけとなる記事はこちら《自作PCのパーツ選定基準について考える事》になるため、もしまだ見ていなければよろしければ見てほしい。
また、グラフィックボード【NVIDIA】編もあるので良ければそちらも併せてみてもらうと、より理解を深める事が出来るかもしれない。
Radeon
Radeonの出自はもともとAMDではなく、「ATI」という会社のGPUブランドであった。ATI当時のRadeonの特徴は、価格は安いけど安定性よりも最新技術を重視した先進性のあるじゃじゃ馬グラボで、使いこなせれば非常にコスパの高いものであった。しかし、2006年にAMDに買収されてしまい、現在はそのなりを潜めAMDのグラフィックボード部門という形に収まっている。
グラフィックス部門のAMDは昔からNVIDIAの対抗馬として抜きつ抜かれつつをしているが、現在はデスクトップPC向けのグラフィックボードでは先を行かれている。
だがPS4やXbox One、次世代ゲーム機のPS5やXbox Series S|Xといった家庭用ゲーム機向けのグラフィックスでAMDのGPUが搭載されるなど、勢いは決して衰えていない。
Radeonの特徴
NVIDIAの特徴としてゲーム(3D)性能の高さをご紹介したが、AMDのRadeonの特徴としては映像出力(動画再生)に力を入れており、GeForceよりもRadeonの方が発色が良いとされている。発色具合に関してどちらが良いかというのは個人の感想の域を出ないが、それでも確かにそれぞれで違いがある。有志の方が実際にそれぞれのグラフィックボードの違いを比較した動画があったのでぜひ参考にしてほしい。
3:20~のシーンで出ているゲームシーンの赤色の発色具合はかなり分かりやすいと思う。
またGeForceのRTXと同様に、RadeonにもRXというシリーズ名が付いている。例えば現行で言えば、RX 6800という具合だ。
このRX 6000シリーズと1世代前のRX 5000シリーズには無い機能だが、以前のRadeonにはFluid Motionと呼ばれる動画再生支援機能が付いていた。例えば、アニメは1秒当たり24fpsで描画されている事を皆様はご存じだろうか。つまりは1秒当たり24枚のパラパラ漫画をしている、と想像してほしい。
Fluid Motionはこの1秒あたり24fpsの描画を、中間のフレームを生成して描画を60fpsにするフレーム補完の技術になる。1秒当たり60枚のパラパラ漫画になるという事で、要はアニメがヌルヌル動く訳だ。もちろんアニメだけではなく、映画等もそうだが60fps未満の動画を60fpsにフレーム補完してくれるため、それぞれが滑らかに描画され動くようになる。
フレーム補完の解説は聞いても分かりにくいと思うので、PCパーツを取扱している株式会社Ask様が実際に動画をあげているのでそれを確認してほしい。
何となくでもご理解頂けただろうか。
これらの発色の良さと動画再生支援機能がRadeonの最大の特徴と言える。
だが、先にも記述した通りこのFluid Motionは現行機種と一つ前のモデルであるRX 6000シリーズとRX5000シリーズでは使用する事が出来ない。
何故かというと、GPUのアーキテクチャ(仕組み・構造)が変わってしまった為だ。
RX500シリーズまではGCNというアーキテクチャを使用していた。だが、RX5000シリーズ以降はRDNAというアーキテクチャに変わった。
これで何が変わったのかというと、RDNAになる事でゲーム(3D)性能が飛躍的に向上したのだ。
おかげで、GeForce RTX 3080とRadeon RX6800 XTの性能はほぼ同性能である。3DMARKというグラフィックボードの性能を図る老舗のベンチマークソフトで比較すると、RTX 3080のスコアが17694であるのに対して、RX 6800 XTは17744だ。(参照元:Best Graphics Cards February 2021)
今のご時世に3D性能が低いのは開発側としては技術力が無い事の証左となってしまう為、会社としても古い技術を捨ててより新しい事へ取り組むのは間違いではないと思う。だが結果としてFluid Motionが使えなくなってしまった為、この機能に魅力を感じていた人は残念な結果となってしまった。
しかし3D性能の向上は確かに間違いではなく、最新のゲーム機であるPS5やXbox Series S|Xでしっかりと反映されており、そのGPUが搭載されている。おかげでAMDの売上には非常に貢献している事だろう。
今後Fluid Motionが復活するかはAMD次第になるが、記事投稿時点ではまだ復活の兆しは無い。
補足になるが、3D性能の向上に伴ってAMDのRadeonでもちゃんとレイトレーシングが使えるようになっている。レイトレーシングについては【NVIDIA】編に簡単に記述したので、そちらを見てほしい。
補足その2になるが、Radeonの命名規則もGeForceの例に漏れず数字が大きい方が性能が高い。
Radeon RX 6800XT とあった場合、「Radeon RX」がブランド名、「6」が世代/使用アーキテクチャを表す。「800」がグレードを表し、「XT」と付く場合は無しに比べて性能が高い。
グラフィックボードの選び方AMD編
グラフィックボードを製造している会社は【NVIDIA】編でも紹介したASUSやGIGABYTE、MSI等が製造している。
これらの有名どころ以外に、Radeonのグラフィックボードメーカーを紹介するのであれば「SAPPHIRE」と「PowerColor」は外せない。個人的には「XFX」というメーカーも外せないところだが、XFXは現在グラフィックボードを日本では発売していない。もし海外輸入が出来る猛者はぜひこれも考慮したいところだ。
「SAPPHIRE」と「PowerColor」はRadeonの老舗グラフィックボードメーカーだ。しっかりとした作りで、かつRadeonの性能をかなり引き出してくる。入手性は悪いが、もしここのメーカーが選べるのであれば優先して選んでいきたい間違いのないメーカーだ。もちろん、有名どころのグラフィックボードも悪いわけではないのでネガティブな勘違いはしない様に。
さて、Radeonのグラフィックボードを選ぶとき、特徴の項で説明した映像出力機能を重視する場合は現行のグラフィックボードではなくRX 500シリーズの様な旧製品を選ぶ選択肢が出てくる。
そんな人は以下のようなグラフィックボードを選択すると良いだろう。
- MSI Radeon RX 550 4GT LP OC 9,500円前後 値段も手ごろでロープロファイルという薄型のケースにも搭載可能
3D性能を重視しない人であれば、発売時期も新しくFluid Motionも使える前述のグラフィックボードで問題ないだろう。
これ以外のグラフィックボードだと旧製品扱いになるので、全体的に品揃えが良くない点に注意したい。
ゲームに向かない旧製品はともかく、ゲームにもいけそうな現行のモデルはどうなのか?という疑問はあるだろう。
正直に言ってしまえば、ゲーム性能は依然GeForceの方が良い。ベンチマークソフトでのスコアはRTX 3090を除けば共に肉薄したものであるが、RadeonのPCでのゲーム性能はやはり負けてしまう。
何故かというと、ゲームを作る側がGeForceを基準にゲームを作ってしまうからだ。もちろんRadeonでも動くようにゲーム制作側は作る訳だが、GeForceを基準とするためそれに最適化されたシステムとなる。
その為、GeForceは最適化の中でスムーズに自身の性能を存分に発揮できるが、Radeonはマシンパワーのゴリ押しで性能を出している状況になっているのだ。
考え方によってはRadeonも現状の中でよくやっていると思うし、もしRadeonに最適化されたゲームが出ればGeForce以上のスコアを出してくれるに違いないが、全世界でのシェアが圧倒的なGeForceがそれを許さないだろう。つまりは売れている方が正義なのだ。
そんな状況を理解した上でRadeon RX 6000シリーズの各ランクを見ていこう。
Radeon RX 6800
RTXの前世代である2000シリーズの最高峰であるRTX TITANと、ベンチマークソフトで同程度のスコアを出せる性能を持っていて、価格と性能を考えると非常にコスパが良い。USドルでRTX TITANが$2499、RX 6800が$579なので異常なコスパだとわかると思う。ただ、何故か日本に輸入されると9~10万程度になってしまう。メーカーを問わず全グラフィックボードの値上がりの波に飲まれた影響もあり、この価格帯になってしまうと選ぶ理由は薄い。
ちなみに現行のRTX 3000シリーズと性能を比較するとRTX 3070と同等くらいになる。価格はRTX 3070の方が安い模様。残念!
Radeon RX 6800 XT
DirectXという3Dを描画するための仕組みみたいなものがある。これの最新はDX12であるが、ゲームによっては前世代のDX11を使用する事が可能である。DX12の方が出来る事が多いので、もしDX12に最適化出来れば非常にきれいな3Dを描画できる。
さて、その前世代であるDX11でRadeon RX 6800 XTを動作させると、GeForce RTX 3090に近いベンチマークのスコアが出せてしまう。次項で説明するRadeon RX 6900 XTは、RTX 3090を超えるスコアが出せる。
ただし、DX12になるとRTX 3080と同等性能くらいで落ち着く。価格も日本円だとRTX 3080と同じくらいの12~14万な為、「ならRTX 3080を選ぶよね」となってしまうのが残念なところ。ちなみにUS$で比較した場合だとRX 6800 XTが$649、RTX 3080だと$699なのでこの価格差だと選択肢に入るレベル。
Radeon RX 6900 XT
正直一番不遇なGPUで、性能はRX 6800 XTよりちょっと良いぐらいで、価格は記事投稿現在では17万くらいになっている。US$で見ると$999となっている為、価格上昇の煽りをガッツリと受けている形になる。
RX 6800 XTと比べると価格の差のわりに性能差がそこまでないので、金額を度外視した最高性能というロマンを追い求めない限りは選ばれないだろう。合掌。
AMD編まとめ
- PCゲーム向けならやっぱりGeForceだけど、最新ゲーム機に搭載されているぐらいには悪くない
- Radeonは比較的動画視聴向け、特に旧世代で使えるFluid Motionは強い
- Radeonのオススメメーカーは「SAPPHIRE」と「PowerColor」(と「XFX」)
- まぁ結局はGeForceでいいかな・・・
最後に一言。【NVIDIA】編での繰り返しになってしまうが、グラフィックボードだけに限らずCPUもそうだが全世界的に該当PCパーツの価格上昇が半端ない。なのでNVIDIAにしろAMDにしろ、買えるときに買っておいた方が後悔しなくて済むと思われる。
欲しい時が買い時なのだ。
グラフィックボード【NVIDIA】編・グラフィックボード【AMD】編と2回に分けてグラフィックボードを紹介してきたが、次回は何を紹介しようか。
まだ悩み中なので次回を楽しみにしておいてほしい。 → 出来ました。【電源ユニット編】