フレイバーテキスト選 ウルザズ・デスティニー

 こんにちは。スマイルです。ウルザ・ブロックのカードを紹介するのも、今回で最後となりました。このシリーズではトーナメントシーンにはあまり言及してきませんでしたが、やはりウルザ・ブロックと言えば、多数の禁止カードと凶悪コンボを輩出した魔境というイメージが強いのではないでしょうか。

ヨーグモスの意志
修繕

 当時、スタンダードに禁止カードが出ること自体が異例であった中、今なおエターナル環境で禁止・制限されるようなカードが頻出したのですから、その衝撃は如何ばかりか。ウルザ・ブロックにまつわる様々な逸話がそれを伝えています。
 「マジックには三つのステップがある。一つ、コイントス。二つ、マリガンチェック。三つ、第1ターンだ」という冗談(?)や、「禁止カードを連発した結果、開発部のメンバー全員が社長室に呼ばれてどやされた」という話を聞いたことがある人も多いかと思います。
 それらは、現在の主席デザイナーであるMark Rosewater氏(通称:マロー)が当時を振り返って書いた以下のコラムが出典になっているようです。

Make No Mistake(原文:Mark Rosewater 訳:杉井光)
http://web.archive.org/web/20080821113244/http://braingeyser.at.infoseek.co.jp/03/1112.html

 マジックが世に出たのが1993年。上記のコラムが執筆されたのが2003年。計十年間の中から二十個の失敗談が取り上げられているわけですが、ウルザ・ブロック関連だけで四つも挙げられていることから(ウルザズ・サーガ、フリースペル、ヨーグモスの意志、修繕)、このブロックの異常さが分かるかと思います。

 一方で、当時を代表するコンボデッキであるMoMaについては誤解も多く、「スタンダードでも1ターンキル率5%」「環境がMoMa一色に染まった」「MoMa対策に平地6000枚デッキが現れた」などの風説に対して、近年になって疑義が呈されています。
 例えば、ホビージャパン社による年間誌、マナバーン2021では、プロツアー・ローマ98(ウルザズ・サーガ発売後、初のプロツアー)の結果を検証し、使用率・勝率いずれの点から見てもMoMaが支配的とは言えないと結論付けています。

トレイリアのアカデミー
精神力

 マジック史上最強と呼ばれるデッキ、MoMa。その伝説には、二十年の月日を経る中で尾ひれが付いていることは否定できないでしょう。とは言え、どれほど禁止カードが出ようと、どれほど環境が荒れようと、最強カードや最強デッキと聞けばワクワクしてしまうのがカードゲーマーの性なのかもしれません。

 案の定、そっち方面について書き始めたら話が盛大に脱線してしまいました。そろそろ本来の趣旨に戻り、フレイバーテキストを見ていきましょう。

対立

ウルザは自分が正気だと言ってる。多分そうなんだろう。しかしプレインズウォーカーの正気の度合いは、判断が難しいからな。
――― バリン

 幾多の次元を渡り歩き、次元そのものさえ思うがままに創造、破壊する旧世代プレインズウォーカー。彼らは神のごとき存在であると同時に、しばしば正気を失っていると言われます。
 それもそのはず。一つの次元に縛られ、たかだか数十年の寿命を生きるに過ぎない常人にとって、その心情や倫理観を理解するのは難しいのかもしれません。

まあウルザの場合、同じプレインズウォーカーからも正気を疑われているわけですが。

<反論>
あなたに反論するのはすぐに止めますよ、ウルザ。あなたが正しいことを言うようになればね。
――― プレインズウォーカー、ボウ・リヴァー

 そもそもバリンも、プレインズウォーカーではないとは言え、千年を生きる大魔導師なので、常人とは言い難いんですよね。彼らから見てもおかしいウルザは、やっぱりおかしい。

泡立つビーブル

レイン事務局長は例年のビーブルの蒸し焼きをやめてしまった。わしはもっと残酷な女と結婚すべきだったな。
――― バリン

 ピンク色のネズミのような生物、ビーブル(上記のイラストでは灰色ですが)。エクソダスの2枚のカード(釣り合い吐き気)のイラストに登場した後、ウルザ・ブロックにてクリーチャーとしてカード化されました。
 しかし、そのコミカルな外見がマジックのハイ・ファンタジー的な世界観に合わなかったため、以降はジョーク・セットでのみ取り扱われています。

そしてこのビーブル、ドミナリアでは食用にされているばかりか、バリンの好物なんだとか。

<ソテー>
美味しいソテーを作るには、適切なビーブルを選ぶのがコツです。毛皮が鮮やかなピンクで鳴き声のうるさい方が、口の中に入れたときにビーブルのみずみずしさがより美味しくはじけます。
― 地獄料理書、アスモラノマルディカダイスティナカルダカール

※カード名、フレイバーテキストは準公式訳

 少なくともレイン(バリンの妻)はビーブルを食べることをよく思っていないようです。泣き叫ぶ小動物を火にかけて、原形を留めたままの状態で口に入れるというのは、味はどうあれ、良い気分ではないでしょうね。

時間の名人

もちろん彼女はクラスのトップです。クラスメートがみんな消えてしまいましたから。
――― トレイリアの背信者ガーサ

 3マナとタップでパーマネントをバウンスするクリーチャー。青のバウンスは、直接的な外傷を与える赤や黒の除去呪文とは異なり、生物を召喚前の状態に巻き戻したり、時空の狭間に飛ばしたりする呪文として表現されています。

 それ故、消えたクラスメートたちも死んだわけではないのでしょう。しかし、故意にせよ事故にせよ、末恐ろしい生徒には違いありません。

真鍮の秘書

生徒たちは秘書の記憶力が抜群なので秘書を嫌っていた ――― しかし物を投げつけられてもそいつには身をかわす能力がないと知ってからは、生徒たちの考えは変わった。

 子供は時に残酷です。アーティファクトとは言え、学校の備品はもっと大事に扱ってほしいものです。
 なお、能力は2マナと生贄でドローが出来るというものなので、マナさえ構えておけば除去が飛んできてもかわすことが出来ます。いや、結局墓地に行くから、かわせてないのか。

有象無象の大砲

ステップ1:君の従兄弟を見つける。
ステップ2:君の従兄弟を大砲に入れる。
ステップ3:別の従兄弟を見つける。

「ゴブリン=鉄砲玉」という認識は、もはや多元宇宙の常識か。

 ゴブリンたちも、虐げられているというよりは、粛々と運命を受け入れているというか、むしろ進んでそういう役回りを引き受けている節があります。

血まなこのサイクロプス

最初に出合った後、ゴブリンたちは彼にチャックという名前をつけた。

投げ飛ばし(クリーチャーを生贄にして、パワー分のダメージを与える)を行うクリーチャー。

 「チャック(Chuck)」は英語圏の男性名であると同時に、「投げる」という意味の動詞でもあるので、それらのダブルミーニングと解釈できます。実際、第8版の再録では、日本語訳が以下のように変更されています。

最初に遭遇して以来、ゴブリンたちは彼を“投げ飛ばし屋”と呼んでいる。

ゴブリンにしては洒落たネーミングですね。

魂の饗宴
魂のカーニバル

魂の饗宴
魂のカーニバル

<魂の饗宴>
ダヴォールの食事の招待に2度目も応じるという者は誰もいないので、エヴィンカー・ダヴォールはたいてい一人っきりで食事をする。

<魂のカーニバル>
「ダヴォール、このエルフらを吹き飛ばせ」「ダヴォール、この軍勢を移動させろ」まったく、今日は私の誕生日だというのに、誰も気にしてないんだから。

 地位も能力もありながら、組織内では冷遇されるキャラクター、ダヴォール。可哀想なんだけど、こういう人間味のある人物がファイレクシアにもいるっていうのが面白いよね。
 なお、年末年始の特番や劇場版では、本来敵同士であるウルザと結託し、絶妙のコンビネーションで新たな敵に立ち向かう活躍ぶりが話題に…という展開は特にありません。でも、ありそうじゃない?

 ウルザズ・デスティニーのフレイバーテキスト紹介は以上になります。楽しんでもらえたのであれば幸いです。お読みいただきありがとうございました。

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